「ソルジェニーツィン短篇集」から『マトリョーナの家』のゴキブリ。

 

一時期、北海道に憧れた。

 ゴキブリがいない。と聞いていたからだ。

ところが、最近は、都市部で越冬しているらしい。
本土から渡ったのだろう。
悲しいことだ。

oshiete.goo.ne.jpより

「クロゴキブリは越冬できますが、低温が続くと死んでしまうため、かつては関東以北では生息していませんでした。しかし、戦後の住宅構造や生活様式の変化により、現在では北海道でも見かけるようになってきています」(アース製薬

「本州からの転勤者などの荷物と一緒に渡り、運よく比較的暖かい場所に移ったゴキブリが繁殖・生息しているようです。北海道では冬でも24時間暖房が効いているような繁華街のビルや共同住宅などに潜んでいます」(アース製薬

 

 ところが、『マトリョーナの家』を読むと、ロシアにもいるらしい。

北海道の網走で北緯44度、ロシアのモスクワで北緯55度だ。
北海道よりはるか北になる。
恐ろしい奴らである。

 

主人公(ソルジェニーツィンらしい)は、冤罪のため強制収容所に入れられた。
収容所から開放された後、下宿していたマトリョーナの家での描写である。

ソルジェニーツィン短篇集」『マトリョーナの家』より
ゴキブリが一目おいていたただ一つのものは、ロシア式ペーチカの焚口と台所を母屋から区切っている仕切壁の一線だけであった。ゴキブリもその一線を越えて母屋のほうへ入ってくることは決してなかった。そのかわり、台所では毎晩うようよしていた。夜おそく、水を飲みにいって、電気をつけたりすると、床も、ベンチも、いや、壁までが一面褐色になってうごめいている騒ぎである。

解説によると、このモデルになった村は、
ウラジミール州クルロフ地区のメリツェヴォ村らしい。
モスクワの南東約150キロのところにある。

 

モスクワあたりにも昔からゴキブリがいるそうだ。

ただし、大きさは日本の半分くらいになる。

 

「マトリョーナの家」では人の良いマトリョーナおばさんが、周囲の人間に都合の良い時だけ利用される。
最後には、他人の車を線路から出すために、機関車に轢かれてしまい、死亡する。
自己犠牲を当たり前のように行う。
こんな人が、多分ソルジェニーツィンの周りにいたのだろう。
ヨーロッパでない、アジア的なロシアの風景をみた。

 

ただ、引用したゴキブリの描写が、頭に残ってしまうことが難点である。

 

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